「声が小さいね」と言われるたびに、自信をなくしていませんか?
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よく聞き返される悩みは、
あなたの性格ではなく“心の状態”が関係しているかもしれません。
「もう一度お願いできますか。」
職場で話をしたとき、そんなふうに聞き返された経験はありませんか。
一度くらいなら気にならなくても、それが何度も続くと、
「私の声は聞き取りにくいのかな。」
「もっと大きな声で話せれば、自信を持てるのに。」
そんな気持ちになる方は少なくありません。
実際に、発声練習や腹式呼吸を試したことがある方もいるでしょう。
でも、それでも思うように変わらないことがあります。
それは、声だけを変えようとしているからかもしれません。
実は、声が小さくなる背景には、これまでの経験や心の状態が関係していることがあります。
今回は、声が小さいことに悩んでいたKさんのお話を通して、
その理由を心理学と脳科学の視点から考えてみたいと思います。
相談者事例
42歳の事務職として働くKさんは、自分に自信が持てないことが長年の悩みでした。
仕事は丁寧で責任感があり、職場でも信頼されていました。
それでも、会議や打ち合わせで発言すると、よく聞き返されてしまいます。
そのたびに、
「やっぱり声が小さいから伝わらないんだ。」
「もっと大きな声で話せるようになれば、自分にも自信が持てるはず。」
そう考えていました。
耳鼻咽喉科を受診したこともありましたが、喉には異常はありませんでした。
発声練習や腹式呼吸も試しました。
それでも、人前で話す場面になると、自然と声が小さくなってしまいます。
カウンセリングでゆっくりお話を伺っていくと、Kさんは子どもの頃のことを話してくださいました。
幼い頃から、ご両親に逆らうことができず、言われたことを素直に守ることで
「良い子」と認められてきたそうです。
自分の気持ちを伝えるよりも、親の期待に応えることが当たり前になっていました。
そのため、大人になった今でも、
「迷惑をかけてはいけない。」
「間違えてはいけない。」
「相手を困らせてはいけない。」
という思いが強く、人前で話す場面では、自分の気持ちよりも周りの反応を気にしてしまいます。
そして、聞き返されるたびに、
「やっぱり私は自信がないから声も小さいんだ。」
と、自分を責める毎日が続いていました。
Kさんが本当に求めていたのは、大きな声を出せるようになることではありませんでした。
安心して自分の気持ちを伝えられること。
そして、「このままの私でも大丈夫」と思える自信を取り戻すことだったのです。
心理学から見えてくること
子どもの頃は、大人に守られながら成長していきます。
そのため、親に認められることや、叱られないように行動することは、とても自然なことです。
Kさんも、その環境の中で安心して過ごすために、「良い子」でいることを選んできました。
これは、その頃のKさんにとって、自分を守るための大切な方法だったのです。
しかし、その習慣が大人になっても続くと、自分の気持ちよりも相手を優先することが当たり前になります。
すると、
「私はどうしたいのだろう。」
ではなく、
「相手はどう思うだろう。という考え方が強くなります。
その状態が続くと、自分の考えや気持ちに自信を持ちにくくなり、人前で話すことにも不安を感じやすくなります。
Kさんも、声が小さいことが原因だと思っていました。
しかし、本当は、自分を安心して表現できない状態が続いていたことが、自信を持てないことにつながっていたのです。
脳科学から見えてくること
私たちの脳には、危険を感じると体を守ろうとする仕組みがあります。
その役割を担っているのが、扁桃体という部分です。
人前で話すことに不安を感じると、扁桃体は「失敗しないように気をつけよう」と体に知らせます。
すると呼吸が浅くなり、肩や首、喉に力が入りやすくなります。
その結果、普段より声が出にくくなることがあります。
また、これまでに聞き返された経験は、海馬という記憶をつかさどる部分に残ります。
次に話そうとしたとき、その記憶がよみがえり、「また聞き返されたらどうしよう」という不安につながることがあります。
すると、考えを整理したり落ち着いて判断したりする前頭前野の働きも弱くなり、自分らしく話すことが難しくなってしまいます。
これは意志が弱いからでも、努力が足りないからでもありません。
これまで積み重ねてきた経験から、脳があなたを守ろうとして起こしている自然な反応です。
だからこそ、声だけを変えようとするのではなく、安心して自分の気持ちを伝えられる心の土台を整えていくことが、
自信を取り戻す大切な一歩になるのです。
声紋分析から見えてきたKさんの特徴
Kさんの声紋分析では、判断基準は視感覚、行動基準は社会軸という傾向が見られました。
判断基準は「視感覚」
視感覚が優位な方は、物事を客観的に見たり、全体の様子を把握したりすることが得意です。
仕事では周囲をよく見て行動できるため、丁寧で信頼されやすい
一方、「相手からどう見られているだろう」と周囲の反応を意識しやすい傾向があります。
そのため、
「変なことを言っていないかな。」
「失敗したと思われないかな。」
と、自分の発言を何度も頭の中で確認してしまうことがあります。
慎重に考えられることは大切な長所ですが、自分に厳しくなりすぎると、
「話す前から緊張してしまう」という状態につながることがあります。
行動基準は「社会軸」
Kさんは行動基準が社会軸でした。
社会軸の方は、「みんなのために」「役に立ちたい」という思いが行動の原動力になります。
責任感があり、周囲との調和を大切にするため、職場では欠かせない存在になることも少なくありません。
しかし、その優しさから、
「迷惑をかけてはいけない。」
「みんなの役に立たなければ。」
という思いが強くなり、自分の気持ちを後回しにしてしまうことがあります。
Kさんも、自分の意見を伝えるより、周りが困らないことを優先していました。
その結果、人前で話す場面では必要以上に緊張し、声が小さくなってしまうことがあったのです。
声紋分析で分かったこと
今回の声紋分析で分かったのは、「声が小さい」ということではありません。
Kさんがどのような基準で物事を判断し、どのような思いを大切にして行動しているのかという傾向です。
その特徴を知ったKさんは、
「自分が弱いからではなく、人を大切にしたい気持ちが強かったんですね。」
と話してくださいました。
自分の特性を知ることで、自分を責める気持ちが少しずつ和らぎ、安心した表情が見られるようになりました。
疲れセルフチェック
次の項目に、いくつ当てはまるでしょうか。
□ 人前で話す前に緊張してしまう。
□ よく聞き返されると落ち込む。
□ 自分の意見より、周りの気持ちを優先してしまう。
□ 失敗すると必要以上に自分を責めてしまう。
□ 「迷惑をかけてはいけない」が口ぐせになっている。
□ 人からどう見られているかが気になる。
□ 頼まれると断ることが苦手である。
□ 自分を褒めるより、反省することの方が多い。
3つ以上当てはまった方は、心が少し疲れているサインかもしれません。
頑張り続ける前に、自分の心を休ませる時間も大切にしてください。
今日からできるセルフケア
① U-LaLa446呼吸法
方法
背筋を伸ばして座ります。
鼻から4秒吸い、4秒止めて、口から6秒かけてゆっくり吐きます。
これを5分ほど続けます。
効果
呼吸が整うことで緊張がやわらぎ、安心して話しやすくなります。
備考(エビデンス)
片岡ら「腹式呼吸と自然呼吸の相違による自律神経系への影響」(2005年、日本保健医療行動科学会誌)では、ゆっくりした呼吸が副交感神経の働きを高めることが報告されています。
② U-LaLa「小さな成功」メモ
方法
寝る前に、その日できたことや良かったことを3つ書きます。
できれば、「なぜできたのか」も一言添えてみましょう。
効果
自分のできていることに目が向き、少しずつ自己肯定感を育てることにつながります。
備考(エビデンス)
島井哲志「ポジティブ心理学の展開」(2010年)では、日々の良かった出来事を書き出すことが幸福感の向上につながることが紹介されています。
③ U-LaLa 筋ほぐしリラックス
方法
肩を軽くすくめて5秒力を入れます。
そのあと、一気に力を抜きます。
肩、首、腕の順番で繰り返しましょう。
効果
肩や首の緊張がほぐれ、呼吸がしやすくなります。
心の緊張がやわらぐことで、自然な声も出しやすくなります。
備考(エビデンス)
『ストレスマネジメント実践マニュアル』(日本ストレスマネジメント学会編、2018年)では、漸進的筋弛緩法がストレスや不安の軽減に役立つ方法として紹介されています。
クライエントさんの声
カウンセリングを受ける前の私は、声が小さいことばかり気にしていました。
人前で話すたびに聞き返されるので、「もっと大きな声が出せれば、自分も変われる」と本気で思っていました。
でも、話を聞いていただく中で、私は声ではなく、自分に自信が持てないことに苦しんでいたのだと気づきました。
小さい頃から親に逆らわず、「良い子」でいることが当たり前でした。
自分の気持ちよりも、相手に迷惑をかけないことを優先する生き方が、いつの間にか私の普通になっていたのです。
声紋分析では、私は物事を客観的に見ようとする傾向があり、周りの人のことを大切にしたい気持ちが強いことを教えていただきました。
その説明を聞いたとき、「だから私は、人の目ばかり気にしていたんだ」と、長年の疑問が少しずつつながった気がしました。
カウンセラーからは、「今まで頑張ってきた自分を否定する必要はありません。その優しさは、あなたの大切な強みですよ」と言っていただきました。
その言葉が、とても心に残っています。
教えていただいた446呼吸法や、小さな成功メモを続けるうちに、人前で話す前の緊張が少しずつ和らいでいきました。
以前は、「聞き返されたらどうしよう」と考えていましたが、今は「落ち着いて伝えれば大丈夫」と思える日が増えています。
不思議ですが、声を大きくしようと頑張らなくなってからの方が、「聞き取りやすくなりましたね」と言われることも増えました。
今でも緊張することはあります。
でも、自分を責め続けることは少なくなりました。
これからも、自分らしく話せる時間を少しずつ増やしていきたいと思っています。
カウンセラー視点
Kさんは、最初は「声が小さいことを改善したい」と相談に来られました。
しかし、お話を丁寧に伺っていくと、本当につらかったのは、「自分に自信が持てない」という気持ちでした。
声は、その人の心の状態が表れることがあります。
だからといって、「声が小さいから自信がない」と決めつけることはできません。
大切なのは、その方がどのような経験を積み重ね、どのような思いを抱えながら今を過ごしているのかを知ることです。
声紋分析は、声の良し悪しを評価するものではありません。
約6秒の声から、その方がどのような判断基準を持ち、どのような価値観を大切にして行動しやすいのかという傾向を知るためのツールです。
その特徴を知ることで、自分を責めるのではなく、「だから私はこう感じやすかったんだ」と、自分を理解するきっかけになります。
自分を理解することは、自分を変えることではありません。
自分を受け入れ、安心して毎日を過ごすための第一歩だと、私は考えています。
まとめ
声が小さいことや、よく聞き返されることに悩んでいる方は少なくありません。
でも、その背景には、これまでの経験や心の状態が関係していることがあります。
もしあなたが、
「もっと大きな声が出せたら、自信が持てるのに。」
そう思っているなら、一度立ち止まって考えてみてください。
本当に変えたいのは、声でしょうか。
それとも、自分を責め続けてしまう心でしょうか。
自分の特性や考え方の傾向を知ることで、これまでとは違う見方ができるようになるかもしれません。
自信とは、誰かと比べて得るものではなく、「このままの自分でも大丈夫」と思える安心感から育っていくものです。
その一歩を、今日から少しずつ始めてみませんか。
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