何も感じなくなっていた私たちに、五感が戻ってくるとき
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メンタル症状・不安/抑うつ
カウンセリングをしていて、私がいつも感じることがあります。
それは、多くの方が「毎日を生きてはいるけれど、感じてはいなかった」
という状態に、とても長く身を置いてきたということです。
仕事に行く。家に帰る。やることをこなす。
でも、空の色も、匂いも、音も、
心にはほとんど残っていない。
私はそれを、弱さだとは思っていません。
五感がなくなったのではなく、閉じていた時期があった
不安や緊張が続くと、人は自然と「感じること」より「考えること」を優先します。
どうすれば失敗しないか。
どう振る舞えば正しいか。
どう考えれば、この状況を乗り切れるか。
そうやって踏ん張るために、感覚は後回しにされていきます。
これは怠けでも、心の弱さでもありません。
生き延びるために、必要だった反応です。
感じすぎると、つらくなる。
だから一時的に、感じないようにする。
多くのクライエントさんは、気づかないうちに、そうやって毎日を乗り切ってきました。
ある日、感覚がふっと戻る瞬間があります
カウンセリングを続けていると、ある日ふと、こんな話をしてくれることがあります。
駅までの道のりで、何気なく空を見上げたら、
「あ、空ってこんな色だったんだ」と思った。
それまで何年も歩いていた道なのに、空を見た記憶がなかった、と。
パン屋さんの前、公園の横、散歩中のわんちゃん
別の方は、いつも通っているパン屋さんの前で、
「
今日は匂いに気づいたんです」と話してくれました。
また別の方は、公園の横を通ったとき、
子どもたちが遊んでいるのを見て、「うるさい、じゃなくて
元気だな、って思えたんです」と言いました。
散歩中のわんちゃんをなでたとき、
手のひらのあたたかさを感じて、少し驚いたように話す方もいます。
どれも、特別な出来事ではありません。
でも私は、これらをとても大切な変化だと感じています。
普段、何も感じなかったことを感じられたという変化
これらの話に共通しているのは、五感が戻ってきた瞬間だということです。
見えた。
匂いに気づいた。
音が耳に入った。
あたたかさを感じた。
不安が消えたわけではありません。
問題が解決したわけでもありません。それでも、
「少し楽になった」
「息がしやすくなった」
そんな言葉が出てきます。
なぜ五感は感じにくくなってしまうのか
五感が感じにくくなるのは、心と体がずっと緊張した状態にあったからです。
常に気を張っていると、人は無意識のうちに「外の世界を味わう余裕」を手放します。
感じることよりも、間違えないこと。考え続けること。先を読むこと。
それが優先された結果、感覚は静かに引っ込んでいきました。
だから、五感がなくなったのではありません。使われていなかっただけなのです。
五感が戻るのは「今は少し大丈夫かもしれない」と感じたとき
空を見上げた。
匂いに気づいた。
音が耳に入った。
あたたかさを感じた。
これらはすべて、
心と体が「今は少し、緩んでもいいかもしれない」と感じ始めたサインです。
五感は、安心できる状態でしか、豊かに働きません。
五感を豊かにするために、頑張らなくていい
ここで大切なのは、感じようとしないことです。
立ち止まらなくていい。
感動しなくていい。
前向きにならなくていい。
ただ、
・目に入った
・耳に残った
・触れたと気づいた
それだけで十分です。
その瞬間に、短い言葉を添える
そして、そっと一言。
今、感じた。ラッキーだ。
これ、悪くないな。
幸せって、こういうことかもしれない。
この言葉は、気分を上げるためのものではありません。
今ここに戻ってきた自分を、脳にそっと知らせるための言葉です。
まとめ
感じられるようになったこと自体が、大きな変化です
五感が鈍くなっていた時期は、あなたが弱かったからではありません。
そうしないと、乗り切れない時間があっただけです。
そして今、小さな感覚に気づけるようになっているなら、
それはもう、回復の途中にいます。
幸せだ。
楽しい。
ラッキーだ。
この言葉は、
未来を変えるための魔法ではなく、
今の現実を、自分の経験として残すための言葉です。
クライエントさんの声
何かを変えなきゃいけないと思っていましたが、
感じられたこと自体が変化なんだと分かって、気が楽になりました。
駅までの道で空を見たとき、「あ、見てるな」と思えたことが不思議でした。
まだ悩みはありますが、パン屋さんの匂いに気づいたとき、少し戻ってきた感じがしました。
何も感じない自分はおかしいと思っていました。
そうじゃなかったと分かって、救われました。
カウンセリングについて
カウンセリングは、
答えを出す場所でも、無理に前向きになる訓練の場でもありません。
今、どこで感覚が止まっているのか。
どこからなら、少し感じられそうか。
そんなところを、一緒に静かに見ていく時間です。
話がまとまっていなくても大丈夫です。
感じていないこと自体も、立派なテーマです。
「少し話してみようかな」そう思ったタイミングで、どうぞお気軽にお問い合わせください。