苦しんでいるのは自分一人ではない
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単身赴任で家族に申し訳なさを感じていた。
家族のために働いているはずなのに、家族に迷惑をかけている気がする。
単身赴任をしている方の中には、そんな思いを抱えている方がいます。
仕事だから仕方がない。
自分で決めたことだから頑張らなければいけない。
家族のほうが大変なのだから、自分が弱音を吐いてはいけない。
そう考えているうちに、自分のつらさを誰にも話せなくなることがあります。
職場では普通に仕事をしていても、帰宅すると部屋には自分一人。
家族に電話をして元気な声を聞くと安心する反面、電話を切ったあとに寂しさを感じることもあります。
そんなとき、苦しんでいるのは自分だけなのではないかと思ってしまうことがあります。
けれど、人は見えないところで、それぞれの悩みを抱えています。
今回は、単身赴任を続けながら、家族への申し訳なさと自分の孤独を抱えていたKさんのお話です。
2.相談者事例|家族に迷惑をかけていると思っていたKさん
Kさんは40代の会社員です。
仕事の関係で転勤があり、現在は家族と離れて単身赴任をしています。
新しい職場では、新しい人間関係をつくらなければなりません。
仕事が終われば、食事や洗濯などの生活も一人でこなします。
一方、自宅では家族がKさんのいない生活を支えています。
家のこと。
家族の予定。
日々のちょっとした出来事。
自分がそばにいればできることも、家族に任せることになります。
Kさんの中には、いつしか家族に迷惑をかけているという思いが強くなっていました。
家族に電話をしても、自分のつらさはあまり話しませんでした。
家族だって大変だからです。
自分まで弱音を吐いたら、もっと心配をかけてしまう。
そう考えていました。
ところが、仕事でも気を使い、家族にも気を使っているうちに、Kさんは自分の気持ちを話す場所を失っていきました。
苦しいのに、苦しいと言えない。
寂しいのに、寂しいと言えない。
自分で何とかしなければと思っていました。
そして、だんだんと自分一人だけが苦しんでいるような感覚になっていったのです。
3.心理学から見る|自分だけが苦しいと感じてしまう理由
人はつらい状態が続くと、物事の見え方が狭くなることがあります。
心理学では、考え方が一つの方向に偏ってしまうことがあります。
たとえば、家族から今日は大変だったと聞いたとします。
すると、家族に迷惑をかけていると感じている人は、自分がいないせいだと考えやすくなります。
けれど、本当にすべてが自分の責任なのでしょうか。
仕事の事情もあります。
家庭の事情もあります。
家族それぞれの生活もあります。
いろいろな理由が重なって、今の状況があります。
ところが、申し訳なさが強くなると、自分が悪いという部分だけが大きく見えることがあります。
そして、もう一つ大切なのが孤独です。
自分の気持ちを誰にも話せない状態が続くと、自分だけがこんなことで悩んでいると感じやすくなります。
人の悩みは、外からは見えません。
職場で笑っている人にも、家に帰れば悩みがあるかもしれません。
元気そうに見える人も、誰にも言えない不安を抱えているかもしれません。
自分だけが苦しいと感じたときこそ、見えているものがすべてではないと知ることが大切です。
4.脳科学から見る|心配が続くと脳は危険を探しやすくなる
私たちの脳には、扁桃体という部分があります。
扁桃体は、不安や危険にすばやく反応することに関係しています。
ストレスが続いていると、ちょっとした出来事にも敏感になることがあります。
家族からの短いメッセージ。
電話で聞こえた少し疲れた声。
職場の人の何気ない一言。
普段なら気にならないことでも、何かあったのではないかと考えてしまうことがあります。
一方、前頭前野は、状況を整理したり、落ち着いて考えたりすることに関係する脳の部分です。
強いストレスが続くと、冷静に別の見方をすることが難しくなる場合があります。
さらに、海馬は記憶に深く関係しています。
以前に家族から大変だったと聞いた記憶などが、今の不安と結びつくこともあります。
すると、また迷惑をかけているのではないかと考えやすくなります。
これは、Kさんの性格だけで説明できることではありません。
長く緊張した状態が続いていることも、一つの背景として考える必要があります。
5.声紋分析|Kさんが大切にしていたもの
Kさんには、6秒の声を使った声紋分析も行いました。
声紋分析は、人を良い悪いで判断するためのものではありません。
自分がどのような感覚を使いやすいのか、どのような行動基準を持っているのかを整理するための一つの材料として活用します。
Kさんの判断基準には、聴感覚(イエロー〜ターコイズ)という特徴が現れていました。
聴感覚のキーワードは、対話・協調・共感です。
人との会話や関係を大切にし、相手とのやり取りから物事を受け取る傾向を考える手がかりになります。
Kさんが家族との電話や会話を大切にしていたことも、この結果をもとに振り返りました。
ただし、聴感覚だから家族のことで悩んだと決めつけることはできません。
あくまで、Kさん自身が自分を理解するための材料の一つです。
そして、V4の波形から行動基準を見ると、自分軸(イエロー)が強く現れていました。
自分軸は、自分のために行動することを表す軸です。
モチベーションにつながる言葉は、やりたい!です。
ここでKさんは少し意外そうな様子でした。
家族に迷惑をかけないようにしなければ。
会社員なのだから頑張らなければ。
そんな思いを優先してきたからです。
しかし、自分軸が強く現れている結果を見ながら話していくと、自分は本当はどうしたいのだろうという問いが出てきました。
家族を大切にすることと、自分を大切にすることは反対ではありません。
自分の気持ちを知ることも、家族との関係を考えるための大切な一歩になります。
6.疲れセルフチェックリスト
最近の自分に当てはまるものがないか、確認してみてください。
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家族に申し訳ないと考えることが増えた。
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自分の悩みを家族に言えなくなっている。
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仕事が終わって一人になると急に疲れを感じる。
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家族からの連絡に必要以上に心配することがある。
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休日でも仕事や家族のことを考え続けている。
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自分が我慢すればいいと思うことが増えた。
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楽しいことをしていても罪悪感がある。
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以前より眠りにくい、または疲れが取れにくい。
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誰にも分かってもらえないと感じることがある。
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本当はどうしたいのか分からなくなっている。
当てはまる数だけで、心の状態を決めることはできません。
ただ、いくつも続いている場合は、少し休んだり、誰かに気持ちを話したりする目安にしてみてください。
7.セルフケア提案
U-LaLa446呼吸法
やり方
背筋を楽に伸ばします。
鼻から4秒かけて息を吸います。
4秒止めます。
口から6秒かけて、ゆっくり息を吐きます。
このリズムを5分程度繰り返します。
効果
ゆっくりした呼吸は、緊張した心と体を落ち着ける助けになります。
家族との電話を切ったあとや、一人の部屋で考え込みそうなときにも取り入れやすい方法です。
備考(エビデンス)
片岡らによる腹式呼吸と自然呼吸の相違による自律神経系への影響(2005年、日本保健医療行動科学会誌)では、ゆっくりした腹式呼吸と自律神経活動との関係が検討されています。
U-LaLa 小さな成功メモ
やり方
寝る前に、今日できたことや、よかったことを3つ書きます。
大きな成果でなくてかまいません。
今日も仕事に行った。
家族に連絡した。
自分で夕食を用意した。
そのくらいの小さなことで大丈夫です。
最後に、できた理由を一言書きます。
効果
できなかったことばかりに向いていた注意を、できたことにも向ける練習になります。
自分は何もできていないという思いから、少し距離を取るきっかけになります。
備考(エビデンス)
ポジティブ心理学では、日常のよかったことを書き出す方法が研究されています。
国内でも、ポジティブ心理学や感謝・肯定的な出来事の記録に関する研究や紹介が行われています。
U-LaLa サンウォーク
やり方
朝から午前中に20〜30分ほど歩きます。
できれば、木や草などの緑が見える道を選びます。
歩きながら、ときどき呼吸にも意識を向けます。
無理に考えをまとめようとせず、外の景色を見ながら歩きます。
効果
歩くことで気分転換につながります。
朝の光を浴びることは、生活リズムを整えるうえでも役立ちます。
単身赴任で休日に部屋へこもりがちなときにも取り入れやすい方法です。
備考(エビデンス)
厚生労働省の身体活動・運動に関する情報では、適度な身体活動が心身の健康づくりに大切であることが示されています。
また、森林環境での活動とストレス反応については、宮崎良文氏らによる森林浴研究などがあります。
8.クライエントさんの声
単身赴任になってから、家族にはずっと申し訳ないと思っていました。
家にいれば自分ができることもあるのに、妻や家族に任せてしまっていると思っていました。
だから電話で家族が大変だったという話をすると、自分のせいなんじゃないかと考えていました。
その一方で、自分も知らない土地で仕事をして、帰ったら一人で、正直つらいと思う日もありました。
でも、家族のほうが大変なのだから、自分がそんなことを言ってはいけないと思っていました。
カウンセリングで話してみると、自分は家族に迷惑をかけているという考えと、自分も寂しいという気持ちが頭の中で一緒になっていたことに気づきました。
声紋分析で判断基準に聴感覚が現れていることや、行動基準では自分軸が強く現れていることを説明してもらいました。
自分軸という結果は、最初は意外でした。
でも話しているうちに、自分にも本当はこうしたいという気持ちがあるのに、それを考えること自体を後回しにしていたのかもしれないと思いました。
まずは教えてもらった呼吸法を、一人で考え込みそうなときにやってみました。
それから、寝る前に今日できたことも書くようにしました。
すぐに全部が変わったわけではありません。
それでも、家族に迷惑をかけている自分という見方だけではなく、自分も家族も、それぞれの場所で頑張っているのかもしれないと思えるようになりました。
これからは、家族の話を聞くだけではなく、自分の気持ちも少しずつ話していきたいです。
単身赴任が終わるまで我慢するのではなく、今の生活の中でも、自分と家族の両方を大切にできる方法を探していきたいと思っています。
9.カウンセラー視点
誰かが大変だから、自分の苦しさが消えるわけではありません
Kさんのお話で大切だったのは、家族への申し訳なさと、自分自身の苦しさを分けて考えることでした。
家族が大変なのは事実かもしれません。
そして、Kさんが一人で頑張ってきたことも事実です。
どちらか一方を我慢させる必要はありません。
家族が大変だから、自分は苦しんではいけない。
もっと大変な人がいるから、自分は弱音を吐いてはいけない。
そうやって自分の気持ちを小さくしていると、心は少しずつ疲れていきます。
人に話すことは、弱さではありません。
自分の中に何があるのかを整理する方法の一つです。
声紋分析も同じです。
分析結果だけで、その人を決めるものではありません。
結果をきっかけに、自分は何を大切にしているのだろうと一緒に考えていきます。
10.まとめ|苦しんでいるのは自分一人ではない
家族と離れて働くこと。
慣れない土地で生活すること。
新しい職場で人間関係をつくること。
そして、離れた家族を心配すること。
単身赴任には、外からは見えにくい負担があります。
家族に迷惑をかけていると思うほど、自分のつらさを言えなくなることもあります。
けれど、家族が大変であることと、あなたが苦しいことは両立します。
どちらかを否定する必要はありません。
苦しんでいるのは、自分一人ではありません。
そして、自分一人で苦しみを抱え続ける必要もありません。
自分の気持ちを言葉にしてみる。
自分は本当はどうしたいのかを考えてみる。
誰かに話してみる。
その小さな一歩から、見える景色が変わることがあります。
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