お金を渡し続けていい? 働かない子どもへの経済的支援と境界線
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親子・介護ストレス
子どもには頼まれる。夫からは断れと言われる
働いていない子どもから、お金を貸してほしいと言われる。
夫からは、もう渡したらダメだと言われている。
夫の言っていることもわかる。
でも、子どもから困っていると言われると断れない。
そんな板挟みの状態になっていませんか。
お金を渡したあとには、これでよかったのかなと後悔する。
断ろうとすると、もし生活できなくなったらどうしようと不安になる。
夫にも本当の気持ちを言えず、一人で抱えてしまう。
これは単に、お金を渡すか、渡さないかだけの問題ではないことがあります。
そこには、親としての心配や罪悪感、夫婦それぞれの考え方、そして自分が何とかしなければという思いが重なっています。
今回は、夫と子どもの間で板挟みになっていたMさんのお話です。
相談者事例|私が断ったら、この子はどうなるんでしょう
50代のMさんからのご相談です。
成人したお子さんは仕事を辞めたあと、なかなか次の仕事に就けない状態が続いていました。
最初はMさんも夫も、少し休めばまた働き始めるだろうと思っていました。
そのため、生活費が足りないときには経済的な支援をしていました。
ところが、その状態が長く続くようになりました。
お金が足りなくなるたびに、Mさんのところへ連絡が来ます。
夫は、このまま渡していたら本人のためにならないから、もう断ったほうがいいという考えでした。
Mさんも、頭では夫の言っていることがわかります。
けれど、実際に子どもから助けを求められると、不安になります。
食べるものがなくなったらどうしよう。
家賃が払えなくなったらどうしよう。
もっと追い詰められてしまったらどうしよう。
そんなことが次々と頭に浮かびます。
結局、お金を渡してしまうこともありました。
すると今度は、夫に対する罪悪感が出てきます。
子どもを助ければ、夫に申し訳ない。
夫の言うとおりにすれば、子どもを見捨てたように感じる。
Mさんは、どちらを選んでも苦しくなる状態になっていました。
心理学から見る|Mさんが苦しいのは優柔不断だからではありません
Mさんのような状態では、二つの大切な気持ちがぶつかっています。
一つは、子どもを助けたいという気持ちです。
もう一つは、このまま支援していて本当に自立につながるのだろうかという気持ちです。
さらに夫の考えも加わります。
夫は将来の自立を心配している。
Mさんは目の前の生活を心配している。
つまり、夫婦で心配している場所が少し違うのです。
その間に入ったMさんは、家族みんなが困らない答えを探そうとします。
でも、全員が傷つかない答えを一人で見つけようとすると、心は疲れてしまいます。
ここで大切なのが、境界線という考え方です。
境界線とは、冷たく突き放すことではありません。
自分ができることと、相手自身が考えることを分けることです。
子どもを大切にすることと、子どもの生活すべてを親が背負うことは同じではありません。
脳科学から見る|子どもに頼まれると断れなくなる理由
人の脳には、危険や不安にすばやく反応する扁桃体があります。
子どもからお金がない、助けてほしいと言われると、Mさんの頭には悪い未来が浮かびます。
生活できなくなったらどうしよう。
何かあったらどうしよう。
このように不安が強くなると、落ち着いて考えることに関わる前頭前野を十分に使いにくくなることがあります。
すると、まず助けなければという反応が強くなりやすくなります。
そして、お金を渡すと一時的に不安が小さくなります。
この経験が繰り返されると、似た場面で同じ行動を選びやすくなることがあります。
記憶に関係する海馬も、過去の経験と今の出来事を結びつける働きに関わっています。
だから、断れない自分を責めるだけでは問題が解決しにくいのです。
まず、自分の中で何が起きているのかを知ることが大切です。
声紋分析|Mさんが無意識に大切にしていたもの
U-LaLaでは、6秒の声をVoiceScanで分析し、判断感覚と行動軸を整理していきます。
今回のMさんの声紋分析では、聴感覚のイエロー〜ターコイズに関わる、対話・協調・共感という特徴に注目しました。
また、行動基準は潜在意識V4の波形から確認していきます。
Mさんの場合、相手軸のターコイズに関わる、目の前の相手のために行動する傾向を一緒に整理しました。
目の前で子どもが困っている。
そう感じると、自分がどうしたいかよりも、相手のために何ができるかを先に考えやすくなります。
これは悪いことではありません。
人を受け入れたり、相手の気持ちを考えたりできることはMさんの大切な力です。
ただ、その力を使い続けると、自分の気持ちが後回しになることがあります。
Mさんの場合も、子どもの気持ち、夫の気持ち、その両方を受け止めようとしていました。
その結果、自分は本当はどうしたいのかが見えにくくなっていたのです。
声紋分析は、人を決めつけるためのものではありません。
自分では当たり前になっている判断や行動の傾向に気づくための手がかりとして活用しています。
疲れセルフチェック
次の項目で当てはまるものがないか、確認してみてください。
□ 子どもから連絡が来るとドキッとする。
□ お金の話になると気持ちが重くなる。
□ 夫と子どもの間を取り持つことが多い。
□ 誰かが困っていると自分が何とかしなければと思う。
□ 本当は断りたいのに断れない。
□ お金を渡したあとに後悔する。
□ 夫に言えないことが増えている。
□ 子どもの将来を何度も考えてしまう。
□ 自分の老後のお金まで心配になっている。
□ 家族のことを考えると眠れないことがある。
いくつ当てはまったかで、自分を評価する必要はありません。
大切なのは、自分も疲れているかもしれないと気づくことです。
子どもからお金がないと言われたときの3つの確認
もし同じような状況にあるなら、すぐにYES、NOを答える前に、一度時間を置いてみてください。
そして、自分に3つ聞いてみます。
① 今、私は何が怖い?
子どもが生活できなくなること?
嫌われること?
冷たい母親だと思われること?
お金を頼まれたとき、私たちは目の前のお金だけを考えているとは限りません。
その奥にある不安に気づくことで、少し落ち着いて考えやすくなります。
② 今回のお金は、本当に緊急の支援?
生活に必要なものなのか。
それとも、本人が自分で考える余地があるものなのか。
頼まれたから渡すのではなく、何のためのお金なのかを一度確認してみます。
③ 私一人で決めようとしていない?
夫婦で決める問題なら、Mさん一人が答えを出す必要はありません。
私だけでは決められないから、少し待ってね。
そう答えてもいいのです。
その場ですぐに返事をしなくてもかまいません。
一度時間を置くことで、不安に押されて反応するのではなく、自分はどうしたいのかを落ち着いて考えやすくなります。
そして、この3つを確認しても気持ちが大きく揺れているときは、次のセルフケアを試してみてください。
今日からできる3つのセルフケア
1.やさしい境界線ワーク
方法
本当はイヤだけれど、つい引き受けてしまうことを一つ書きます。
次に、自分ができることと、できないことを分けて書きます。
最後に、次に同じことを頼まれたときの言葉を考えておきます。
たとえば、今すぐは決められないから、お父さんとも話してから返事をするね、でもかまいません。
効果
その場の不安だけでYESと言ってしまうことを減らし、自分の気持ちも大切にしながら考える練習になります。
備考(エビデンス)
アサーション・トレーニングの国内研究では、自分の気持ちや意見を適切に伝える練習が、対人関係のストレスを軽くすることにつながるとされています。
2.感情ラベリング
方法
子どもからお金を頼まれたら、すぐに返事をせず、今の気持ちを一つ書きます。
不安、罪悪感、怒り、心配など、短い言葉でかまいません。
次に、その気持ちの強さを0%から100%で書きます。
効果
気持ちを言葉にすることで、自分が何に反応しているのかを整理しやすくなります。
不安のまま行動するのではなく、一度考える時間を作ることにもつながります。
備考(エビデンス)
認知行動療法では、出来事、考え、感情などを書き分けて整理する方法が用いられています。
厚生労働科学研究などでも、認知行動療法を用いたストレスへの対処が研究されています。
3.U-LaLa446呼吸法
方法
背筋を楽に伸ばします。
鼻から4秒かけて息を吸います。
4秒止めます。
口から6秒かけてゆっくり吐きます。
無理のない範囲で5分程度繰り返します。
効果
気持ちが大きく揺れているときに、すぐ答えを出さず、自分を落ち着かせる時間を作りやすくなります。
備考(エビデンス)
腹式呼吸と自然呼吸の相違による自律神経系への影響(片岡ら, 2005, 日本保健医療行動科学会誌)では、ゆっくりした腹式呼吸と自律神経活動との関係が報告されています。
クライエントさんの声|私は家族全員の問題を背負おうとしていました
最初は、子どもにお金を渡すのをやめたほうがいいのか、それとも助けたほうがいいのか、その答えを教えてほしくて相談しました。
夫からはもう渡さないほうがいいと言われていて、私もその通りだと思う気持ちはありました。
でも、実際に子どもから困っていると言われると、断ったあとに何かあったらどうしようと思ってしまいました。
だから子どもにお金を渡して、そのあと夫に申し訳なくなって、ずっと二人の間に挟まれている感じでした。
話していくうちに、私は子どもの生活だけでなく、夫の気持ちも子どもの気持ちも、全部自分が何とかしようとしていたことに気づきました。
声紋分析でも、目の前の相手のために動こうとする自分の傾向を一緒に見てもらって、今まで家族の中で自然にやってきたこととつながりました。
それからは、子どもから何か言われても、その場ですぐ答えなくてもいいと考えるようにしました。
不安が強いときは446呼吸法をして、今は何が怖いんだろうと気持ちを書いています。
以前なら、頼まれたらすぐに何とかしなくてはと思っていましたが、今は私一人で決めなくてもいいと思えることが増えました。
まだ心配はあります。
でも、子どもの人生を全部背負うことと、親として心配することは違うのかもしれないと思えるようになりました。
これからは夫とも、渡すか渡さないかだけではなく、私たちがどこまで支援するのかを話していきたいと思っています。
そして、子どものことだけではなく、自分たち夫婦のこれからの生活も大切にしたいです。
カウンセラー視点|Mさん一人を家族の調整役にしない
今回、大切だったのは、Mさんにお金を渡さないよう説得することではありませんでした。
反対に、母親なのだから助けてもいいとお伝えすることでもありません。
必要だったのは、Mさん一人が家族全員の問題を背負っている状態を整理することでした。
夫には夫の考えがあります。
子どもには子ども自身が考える部分があります。
そしてMさんにも、自分の気持ちや生活を守る権利があります。
経済的支援について考えるときは、渡すか、渡さないかだけではなく、何を、いつまで、どこまで支援するのかを家族で整理することも大切です。
お母さんだけを窓口にしないことも、一つの境界線です。
まとめ|助けないことと、見捨てることは同じではありません
子どもから助けを求められる。
夫からは断ったほうがいいと言われる。
その間に立つお母さんは、とても苦しいと思います。
でも、家族全員が納得する答えを、お母さん一人で作らなくてもいいのです。
子どもを心配することと、子どもの人生をすべて背負うことは違います。
境界線を作ることは、愛情をなくすことでもありません。
まずは、自分は何が怖いのだろうと、自分自身の気持ちにも目を向けてみてください。
そこから、家族にとって無理のない支援の形が見えてくることがあります。
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